長かった戦争もようやく終わり、キラ、アスラン、カガリはストライクルージュで帰艦した。
傷付いたキラはアークエンジェルの医務室に運ばれ、エターナルから駆け付けたラクスが傍に付いている。
アスランとカガリは、キラをラクスに任せてAAの一室で二人きりになっていた。
パイロットスーツのまま激しい戦いでの疲労を癒す二人。
「終わったな、戦争も・・・」
感慨深げに呟きながら、カガリに微笑み掛けるアスラン。
その表情は疲労の中にも幸せそうな色を浮かべ、カガリを見る目はとても優しい。
生きてカガリと二人でいられることが嬉しくて堪らない。
そんな想いが溢れている。
しかし、カガリは黙ったままだ。
アスランが不思議そうにのぞき込むと、不機嫌そうに顔を上げたカガリに次の瞬間、思いっきり殴られていた。
「なっ!」
あまりの驚きに身動きすら取れないアスラン。
殴られた頬がじんじんと熱を帯びる。
アスランは頬に手を当てることもできず、茫然とカガリを凝視する。
カガリはまっすぐにアスランを睨み付け、彼を殴った手を一方の手で押さえながら言い放った。
「一度、殴ってやらないと気が済まなかったんだ!」
「カガリ・・・」
今にも泣きそうな表情のカガリに、アスランは戸惑いを隠せない。
「お前! もしまたあんなことしようとしたら、絶対に許さないからな!」
その言葉にようやく合点がゆく。
あの自爆のことか。
アスランの端正な顔が沈鬱なものになる。
数刻前、アスランはジェネシスの中でジャスティスと共に自爆しようとした。
だが、直前に駆け付けたカガリによって救われたのだ。
死を覚悟していたアスランに、カガリは悲痛な声で「生きろ」と叫んだ。
カガリの父ウズミ・ナラ・アスハがオーブ国と共に自爆した後、キラに縋り付いて泣きじゃくったカガリの姿はアスランの中に強く残っている。
自分が死んでしまえば、カガリはまた酷く傷付くのだろう。
その瞬間、アスランは心から思った。
絶対に死ねない―――と。
自分を睨み付けてくる、涙の溜まった琥珀の瞳。
その視線を受け止め、アスランは謝罪の言葉を紡ぐ。
「ごめん、カガリ。あの時は、あれしか方法が思い付かなくて・・・」
「馬鹿! あんな方法しか思い付かない頭なら一度全部洗って来いっ」
「二度としないよ」
カガリを哀しませるようなことは、二度としない。
想いを込め、はっきりとした声音でそう言う。
「当たり前だ。二度目があったら私はお前を嫌いになるからなっ」
「そ、それは困るな・・・」
カガリの思い掛けない言葉に、本気で狼狽するアスラン。
常に冷静なその表情が、困惑に彩られている。
「知るか!」
怒鳴るように言って、踵を返して立ち去ろうとするカガリ。
アスランは慌てて少女の後姿を追い、背後から華奢な身体を抱き締めた。
「ちょ・・・アスラン?」
突然の抱擁に、カガリは赤くなって戸惑う。
アスランは腕の中で固くなっているカガリの耳元に唇を寄せ、そっと囁く。
「嫌いになんて・・・ならないでくれ・・・」
途端にカガリは真っ赤になって、アスランの腕から逃れようと暴れ始めた。
しかしアスランの力に適うわけもなく、容易に抵抗を封じられてしまう。
「・・・っ、お前って本当馬鹿!」
「うん。俺はカガリがいないと駄目みたいだ。お前にだけは嫌われたくない」
「そ、そう簡単に嫌いになれるわけないだろっ」
ぶっきらぼうに言い放つ。
耳まで赤くなっているのが見て取れ、アスランの口元に笑みが浮かぶ。
カガリの身体を反転させて向き合うと、赤い顔がそっぽ向く。
そんな可愛らしい仕草に、アスランは幸せそうに微笑み、甘い声で告げる。
「俺は、カガリが好きだから・・・」
カガリに救われたこの命。
これからは、カガリの為に生きていくから―――。
END
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