始まりの時

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余程お互いに運が強かったのだろう。
離れ離れとなり、互いの無事すらも解らなかったシュウとエルク達だったが、無事に再会することができた。

そして、歌姫シャンテを仲間に加え、四人は白い家に乗り込んだ。

そこでエルクは、幼馴染の少女ミリルと再会する。
だが、そこでもガルアーノの魔の手が悲劇を生む。

二人は、シュウ達の目の前で床下へと落とされてしまった。

「エルク! エルク!!」
リーザの悲痛な叫びが響く。

シュウとシャンテは、どうにかしてエルクを助け出したい一心で室内を調べて回った。
どこかに地下に通じる道があるかも知れないと切望しながら、それが無駄な努力であると解っていても。


どうするここもできずに二人が再びリーザの傍に来た時、轟音と共に白い家が激しく揺れた。
衝撃に三人がその場に倒れ込むと、警報と共にアナウンスが流れた。


《侵入者有り、侵入者有り・・・

           侵入者はアーク! 繰り返す・・・侵入者はアーク!》


「アークだと!?」
シュウが驚きの声を上げた直後、エルクの落とされた床下から凄まじい爆音が響いた。
エルクの身に起こったであろう事態に、シュウ達三人は一様に蒼ざめた。

「エルク! エルク! エルクーッ!!」
つんざくような悲鳴が上がる。
取り乱したリーザは、床を拳で何度も叩きながら必死にエルクを叫ぶように呼び続ける。

「エルクに何をしている! 姿を見せろ、ガルアーノ!!」
シュウが怒鳴る。
だが、ガルアーノは一時だけ姿を見せ、高らかに笑った後すぐにどこへともなく去って行った。

嫌な予感に、シュウの全身に寒気が走った。
(エルク、頼むから無事でいてくれ!)
焦りと不安が、心の中を支配する。
シュウ自身、爆薬を使うこともあるので解る。エルク達が決して無事ではいられないであろうことが。


「このままじゃこの建物が!」
シャンテが声を上げる。
爆発による揺れは激しさを増し、この場に居続けることは危険だ。
「でもエルクを助けなきゃ!!」
リーザが叫ぶ。

その時、閉ざされていた扉が外側から吹き飛ばされた。

「なにをしているんだ!」

声と共に飛び込んで来たのは、アーク、その人だった。
シュウ達三人は突然現れた意外な侵入者を驚愕の表情で凝視する。
「お前達、研究所の者ではないな? ここで何をしている」
「アーク、何故お前がここにいるんだ?」
ショックから素早く立ち直ったシュウが問い掛ける。

「ここは間もなく崩れる。早く逃げろ!」
質問には答えず、アークはそう言って三人を促そうとする。
そんなアークにリーザが縋るような声で叫ぶ。
「エルクが、仲間がこの下に落とされたんです!」
「仲間? 奴らにやられたのか?」
「エルクは・・・、大事な人をここから助け出すために・・・」
その言葉にアークは瞬時に行動を起こす。
「解った、そこを離れろ!」

リーザ達三人がある程度離れたことを確認して、彼は魔法を唱えた。
「バーングランド!」
凛とした声が響き、床の一画が炎に包み込まれ、高熱に溶けてゆく。

その様子を見て、シュウは半ば唖然となった。
(エルクよりも凄い炎の魔法だ・・・)
これまで、エルクより勝る炎の力を見たことはない。
エルクは、炎の申し子とも呼べるほど強大な炎の力を持っている。
しかし、アークの炎はそのエルクをも凌駕していた。しかも彼は、下に人がいるために若干力を抑えていたようにも見受けられる。
この少年は、自分達とは格が違い過ぎる。


圧倒的な力を見せ付けたアークの方は、表情ひとつ変えずにシュウ達を振り返る。
「皆、俺について来い!」
そう言って彼は炎の熱によって溶けて出来た穴の中に飛び込み、すぐにシュウ達もそれに続いた。



「エルク!」
狭い部屋の中に倒れているエルクを見付けてリーザが駆け寄る。

爆発の直撃を受けたのか、彼の身体はほぼ全身が焼け爛れていた。
身体中には爆発による大小無数の破片が突き刺さり、一見してダメージの深さが窺い知れる。
あまりにも酷い彼の様子に、リーザもシュウもエルクに触れるのを一瞬躊躇したが、すぐにリーザとシャンテが回復魔法を唱える。
シュウは室内を見回すが、エルクと一緒に落とされたはずのミリルの姿がない。

その時、激しい衝撃とともに部屋の壁が崩された。
崩れた壁を見やると、その先に何かの入り口が現れた。
ハッチが開かれ、軍服姿の男が姿を現す。
「アークさん! 急いで! 長くは持ちません」
どうやらアークの仲間のようだ。とすると、シルバーノアへの入り口か。

「時間がない。さあ、乗り込むんだ。急げ!」
ここはアークの言葉に従うのが賢明だと判断し、シュウはエルクを抱き上げる。
続いてリーザとシャンテも乗り込むと、間もなくシルバーノアは急発進した。


エルクを床に降ろして振り返ると、そこには先程の軍服姿の男がいた。
だが、一緒にいたアークの姿が見当たらない。
シュウは、忙しく走り去ろうとする男を呼び止めた。
「アークは?」
「アークさんは白い家に残られました」
そう答え、彼は別室に向かおうとする。
「待て! どういうことだ」
崩れかけている建物に残るなど、危険過ぎるのではないか。
しかし、男はさっさと部屋を出て行ってしまった。

入れ替わるように、恰幅の良い髭面の男が部屋に入って来る。
思わず警戒するように男を睨むシュウ。
エルクに治癒魔法を掛けるリーザやシャンテを庇うように、男の前に立ちはだかる。
そんなシュウに、男は愛想の良い笑みを浮かべた。
「そんなに睨まんでも何もせんわい。わしはこのシルバーノアの艦長じゃ」
「やはりシルバーノアか。だが何故だ? 何故犯罪人のお前らが俺達を助ける?」
「お前達を助けたのはアークじゃよ。わしらはアークに従っとるだけじゃ」
男はそう言って、心配そうにエルクをのぞき込んでいるリーザに笑い掛ける。
「お嬢ちゃん、心配するな。ククルならきっと助けてくれる」
「ククル?」
涙ぐんだリーザの瞳が不思議そうに男を見上げる。
「ああ、わしらの仲間の聖なる力を持つ少女じゃ。昔はおてんばじゃったがな」

「どこに向かっている?」
シュウが問う。
「スメリアじゃ」
「スメリアと言えば、お前らが国王を殺して逃げ出して来た国では?」
「今言葉で言っても信じてもらんだろうが、わしらはそんなことはしとらん。わしらは嵌められたんじゃ」
確かに、この男はどうか解らないが、アークがスメリア国王を暗殺したとは到底信じ難い。
あれほど清廉な人間を見たことはない。おそらく、男の言葉は正しいのだろう。



シュウはすでに、アーク一味をどうこうする気は起こらなくなっていた。
真の敵は、ガルアーノとロマリアだ。


そう、確信する。










暮れゆく大空を悠然と飛ぶシルバーノア。


魔力を使い切ったシャンテとり―ザは疲労の色も濃く、エルクのそばに座り込んでいる。


エルクはというと、リーザ達の努力も空しく依然危篤の状態だ。
苦しそうな表情で荒い呼吸を繰り返している。


シュウは窓際に立って、遥か彼方へと目を向ける。


気掛かりなのは、崩れゆく白い家に一人残ったアークのことだ。

無事でいるのだろうか?

せっかく会えたのに、落ち着いて会話することも出来なかった。


(助けてもらった礼も言っていないのだがな・・・)
シュウは、物憂げに溜息をついた。


End

シュウとアークの出会い編です。
シュウはかなりアークを意識してますが、アークの方は特に何の感情も持ってないです(苦笑)。
アークにしてみればハンターなんぞの相手をしてる場合じゃないですから。

シュウシャンも好きなのですが、ここではシャンテさんには脇役に徹して頂きます(汗)

次回はエルクとククルの出会い編です。





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