訪れる安らぎ




北極にてアンデルを倒したアーク達は、トウヴィルのククルの神殿に戻って疲れを癒すこととなった。

アーク達の悲願である、アンデルを討つことは出来たが、聖柩は破壊され、暗黒の王は復活してしまった。

明日からはロマリアに乗り込んで、最後の戦いとなる。
そのため神殿では皆それぞれ、武器の手入れをしたり、装備を整えたりと最終戦に向けての準備をしている。

そんな中、リーダーであるアークは、ククルと二人で神殿の周りを散歩していた。
交わす言葉は少ないが、二人の間には穏やかでありながら、どこか切なげな空気が漂う。

「いよいよ全てが終わる・・・」
哀愁を感じさせる静かな声音で、アークが呟く。
ククルが顔を向けるとアークは立ち止まり、ククルもそれに倣う。
「ククル、俺達の未来がどうなるか、まだ解らない。けど、俺は最後まで戦うよ。君のため、母さんのため、そして自分のためにね」
穏やかに、だが決然とアークが言う。
ククルの笑みもまた、静かながら強い意志を感じる。
「ええ、アーク・・・私も、諦めない」

生きることを決して諦めない。たとえ、未来に道が無いのだとしても。
それが、二人の思い。

お互いの気持ちを確認し、再び二人は歩き始めた。



「ねえ、アーク」

暫しの沈黙の後、躊躇いがちにククルが話を切り出す。
「何?」
「アークは、今もあの時の願いは変わらない?」
「?」
言葉の真意を解り兼ね、アークの視線がククルに注がれる。
「今も、誰も愛さない?」
「・・・ククル?」
何を言い出すんだと言いたげなアークに、ククルは悪戯っぽく微笑む。
「この前ね、エルクに言われたの。私達が誰にも愛されないように望んでいたって、皆は私達を大切に思っているんだって。ふざけるなって怒られちゃった」
驚きに一瞬動きが止まった後、アークは「エルクらしいな」と苦笑混じりに言った。
「誰も傷付いて欲しくはないけど、だからと言って私達を愛してくれる人の想いを否定なんてしちゃいけないって、その時思ったの」
ククルの言葉に、アークの表情が曇る。


『あんたが好きだ』


掠れた声で囁かれた言葉が脳裏に蘇る。
いつもは冷たい瞳には優しさが宿り、アークの姿を映していた。

「そうかも知れないね・・・」

あの時、アークは打ち明けられた想いから逃げた。
辛いだけの愛なら、始めから無い方がいい。
そんな、自分勝手な考えで。

「俺は、冷たい人間なのかも知れないな・・・」
独り言のような小さな呟き。
だが、ククルの耳にはその音が届いていた。
彼女は優しくアークの頬に触れる。
「それじゃ、何故そんなに哀しそうな顔してるの?」
「哀しそう・・・?」
不思議そうにククルの言葉を反復する。

「辛くても、哀しくても、やっぱり人は誰かを愛して生きてゆくものよね」
そう言ってククルは、アークの腕に自分の両腕を絡ませる。
「私は好きよ。この世界も、精霊も、人間も・・・。トッシュやポコ達、それにアーク、あなたもね・・・」
花が咲くように美しいククルの笑顔に、アークは言葉を無くして見惚れた。
「うん。俺も、好きだよ」
嬉しそうに顔を綻ばせ、ククルに頷いてみせた。







神殿に戻って来たアークとククルの仲睦まじさに、トッシュやチョンガラの冷やかしの声が掛かる。
二人はどこ吹く風とばかりに取り合わないが、その様子を内心穏やかならずに見つめる瞳が4つ。
エルクは傍目にも明らかに不機嫌で、シュウはいつもよりも況して無表情だ。
「何いじけてるのよ、エルク」
不機嫌オーラを感じ取ったのか、床に座り込んでいるエルクの首に、後ろからシャンテの腕が巻き付く。
「うわあっ、何すんだよ!」
驚いて逃れようとするエルク。だが、シャンテはおもしろがってしな垂れ掛かる。
「もう、照れちゃって可愛いーv にしてもエルクって体格の割にちびっちゃいわよねー。私より背低いもんね」
「う、うるせーよっ! 人が気にしてることをっ」
シャンテの言葉にすかさず怒声を上げるエルク。
余程悔しいのだろう。顔が真っ赤だ。

この騒ぎに、アークとククルもエルク達の傍まで来た。
「何だ、エルク。背丈のことなんて気にしてるのか」
「大丈夫よ。成長期なんだから」
「そうそう。たくさん食って寝て運動すりゃ嫌でも伸びるって。あんまり気にすんな、小僧」
「そうだよー。だいたい僕なんてエルクより低いよー」
「あんたの髪の毛って、身長低いの気にして逆立てるの?」
アーク、ククル、トッシュ、ポコ、サニアが軽い口調で無責任な台詞を立て続けに吐く。いや、ポコだけは何だか物悲しさを感じるが・・・。
傍らに立つシュウが慰めようと思ったのか、エルクの頭をポンポンと叩く。
が、逆効果だった。


あんたら、俺をからかって遊んでるだろーっっ!!


シャンテとサニア以外の者に悪気はなかったのだろうが、当事者であるエルクにとっては身長に関しては結構深刻な問題のようだ。
彼が何よりも気にしているのは、想い人よりも身長が低いという悲しい事実である。二年以内にはアークに追い付いてみせると、密かに決意していたりする。

とにかく、エルクの深刻な悩みは他人に理解されず、仲間達の間には明るい笑いが広がった。





■■■■■





夕暮れ時、神殿では夕餉の支度が進んでいた頃、神殿に続く階段の途中では、すっかりへそを曲げてしまったエルクが一人座り込んでいた。

ふと、背後に衣擦れの音を感じて振り返ろうとすると、エルクの目の前が突然暗くなった。
「っ!?」
「だーれだ♪」
楽しげに弾む澄んだ声。
その声にエルクは強張っていた身体の緊張を解き、
「ククル・・・。何考えてんだよ、あんたは・・・」
疲れたような呆れたような低い声が漏れる。
「びっくりした?」
細い両手が外されると、ククルの無邪気な笑顔がエルクの目の前にあった。
途端に赤くなるエルクだったが、照れ隠しに不機嫌な表情を造って「なんだよ」とぶっきらぼうに尋ねる。
「もうすぐ夕食だけど、まだ怒ってる?」
台詞は心配げだが、表情と口調は明らかに楽しげだ。
こんな風に問われては、流石にエルクも怒りを持続することが出来ない。
「なんだよ、もう。あんたには負けるぜ」
笑いを含むその声にはすでに怒りはない。

ククルはエルクの隣に腰掛け、トウヴィルの村を見下ろした。
「村、活気が戻ってきたでしょ?」
言われてエルクも眼下の村に視線を落とす。

エルクが初めて見たのは、朽ち果てた村の姿だった。
だが、村人が帰って来てからは、次第に村には生気が戻り始めた。
廃墟同然だった家々は少しずつ修復され、荒れていた田畑も耕されていった。
乾いていた風も、今は優しく感じられる。

「エルクのお陰ね。本当にありがとう」
トウヴィルの村人を救ったのは、エルクとポコだ。
改めて礼を言われ、エルクはまた赤面する。
「べ、別に礼なんていらねーよ・・・」
そっぽ向くエルクの仕草に小さな笑いを漏らし、ククルは夕焼けの茜色に染まる村に視線を戻す。
「いつまでも、こんな日が続くといいのに・・・」
耳をくすぐるククルの声に、言い様のない淋しさを感じ、エルクは彼女の横顔を見つめる。
「静かで平和な時間が、ずっと続いて欲しい。精霊と世界中の人達に安穏の日々が訪れて欲しい・・・」
「そのために俺達は戦ってるんだろ?」
エルクが言葉を返すと、ククルは視線を村からエルクに移し、
「そうね・・・」
頷きながら立ち上がるククルを、エルクの目が追う。
「エルク、私、貴方には本当に感謝してる。村の人達を助けてくれたこと、私達に力を貸してくれたこと・・・」
「やめろよ!」
不機嫌な表情で、エルクも立ち上がった。
動作の荒々しさが、彼の苛立ちを如実に現しているようだ。
「礼なんていらねーって言ってるだろ。それに、俺は自分がしたいと思ったから色々とやってきたんだ。恩を着せるためじゃねえ」
ククルは柔らかく微笑み、「そんなつもりじゃないのだけれど・・・」と苦笑する。

「出来ることなら、平和が戻った世界で貴方と話してみたい。エルクの話を聞きたいし、私のことも知ってほしい」
「そ、そんなのいくらでも出来るよっ」
真っ赤に顔を染めて声を張り上げ、エルクはククルの方に一歩踏み出した。
「話し合う時間なんていくらでも作ってやるよ。平和が戻ればもうあんたは自由なんだ。何だって好きなこと出来るよ。色んな場所にだって連れてってやるって!」
そこまで言って、「あっ」と口を噤む。
「別に俺じゃなくても、アークがするか・・・」
苦々しく笑いながら、調子に乗り過ぎた自分を恥じる。
ククルはそんなエルクを真っ直ぐに見つめ、
「私ね、貴方のことがとても好きよ」
告げられた言葉に、エルクの目が大きく見開かれる。
彼を見る優しい菫色の瞳の中に、からかいの色は皆無だ。
「そして、ありがとう。私を想ってくれて・・・」
そういって美しく微笑むククルの白い頬はうっすらと染まり、瞳は宝石のように輝いている。
アークと同じように他人の前では感情を抑えている聖母が、エルクの前で初めて心からの嬉しさを素直に見せた。

気が付くと、エルクはククルの身体をきつく抱き締めていた。
細く、柔らかい彼女の身体は、エルクよりも少し体温が低い。
エルクは両腕に力を込め、自分の熱を伝えようと、更に身体を密着させる。


二人は、暫くの間そうして無言のまま抱き合い、お互いの鼓動を感じていた。

「何だよ、突然」
耳元で囁かれた声は掠れ、嬉しさが滲む。
エルクの肩に顔を寄せ、ククルは愛しさと淋しさが混在するような複雑な感情に胸が痛んだ。

エルクに言った言葉はすべて本当の気持ちだ。
だが、平和が戻った世界で彼と共にいられる時間は、彼女にとっては掴むことのできない夢のように思えた。
これまでにも多くの傷を背負って来たこの少年に、さらに深い傷を与えてしまうかも知れない。けれど、真っ直ぐな彼の気持ちに、ククルも正直に答えたかった。それが、お互いを傷付けるだけだとしても・・・。

心の中で涙を流しながらも、ククルはエルクに笑顔を見せる。
「もうすぐ夕飯よ。トッシュに食べ尽くされないうちに戻りましょう?」
ククルの冗談に、エルクも明るく笑って抱擁を解く。
それでも完全には身体を離したくないのか、エルクはククルの手を取って彼女が階段を上がるのをエスコートする。
しかし、数段上ったところで立ち止まり、後ろを振り返った。
ククルの美しい顔が不思議そうにエルクを見上げる。
ククルは一段下にいるため、エルクの方が若干背が高い。

「あの・・・さ」
遠慮がちに口を開く。
「・・・一度だけでいいから・・・その・・・」
「なあに?」
要領を得ないエルクに、ククルは困ったような笑みを浮かべて先を促す。
「・・・・・・」
「え?」
口の中で何やら呟いていたが、どうにも聞き取れない。
見るとエルクの顔はこの上ないほど真っ赤だ。
もちろん夕日のせいなどではない。

「・・・キス・・・しても、いいかな・・・」

ようやく聞き取れるほど微かな声でそう言った。
すぐには意味を理解できなかったククルだったが、次の瞬間にはエルクに負けないくらい赤くなった。

何も言えなくなってしまったククルの様子に、エルクは慌てたように頭
(かぶり)を振り,
「や、やっぱりいいっ、今のなし!」
喚きながら階段を上ろうとする。
ククルは、繋がれたままの彼の手を引っ張って注意を促す。
エルクがもう一度振り返ると、熱くなった頬に添えていた片手を下ろし、心持ち顔を上げてエルクに微笑み掛けた後、そっと目を綴じた。
一連の動作は流れるように美しく、はにかむ様子はとても可憐だ。
侵し難い神聖さに躊躇したエルクだったが、受け入れてもらえた感慨の方が強かった。
手を繋いでいない方の手を、いつもよりも低い位置にあるククルの肩に添える。

そして、ゆっくりと顔を近付けてゆき、彼女の柔らかな唇にそっと自分の唇を重ね合わせていった。





■■■■■





夕餉の支度が整うまで、アークは久しぶりに母との時間を過ごしていた。
ククルや神殿の神官達の献身的な看護のお陰で、ポルタの身体は徐々に回復してきていた。
それでも体力的にも精神的にも疲れ果てていたため、完全に回復するにはまだ長い時が掛かりそうだ。

暫く話していると、ポルタに疲れが見え始めた。
お互いに話したいことはたくさんあったが、無理をさせるわけにもいかず、母が眠るとアークは静かに部屋を出た。


「アーク」

部屋の外に出ると、壁に凭れてアークを見つめるシュウの姿があった。
ずっとそこに立って、アークが出て来るのを待っていたようだ。
「話があるのだが、いいか?」
聞かれて、一瞬アークの身体が強張った。
アークが警戒するかのように慎重に頷くと、シュウは身を翻して歩を進め、アークもそれに続く。

この時間、アークやシュウ達の割り当てられた部屋には、誰もいなかった。
エルクは神殿の外に出、トッシュは広間でゴーゲンやチョンガラと共に酒を煽り、ポコは夕餉の支度を手伝っているはずだ。
それを見越してシュウは、その部屋でアークと二人で話をすることにした。
部屋に入ると奥へと進み、続いて入って来るアークを振り返る。

部屋の扉が閉まると、室内は静寂に包まれる。
きつい眼差しで見据えるシュウの視線に、アークは内心たじろいだ。
シルバーノアでの一件から、シュウはいつもにも況して口数が少なくなっていた。
感情表現が乏しく、何を考えているのか解り難いと評判の彼だが、あれからずっと不機嫌だというのは誰の目にも明らかだった。

アークは、自分に原因があると解っていた。
だが、あの時のアークの言葉を、どう理解したのかは解らなかった。
リーザがククルの言葉を聞いていたことも、シュウがリーザからその話を聞いたことも、彼は知らなかったので、シュウがアークの言葉の真意をどう取ったのか知る由もない。


「それで・・・話とは何ですか?」
いつまで経っても黙ったままのシュウに、戸惑いがちに尋ねる。
シュウはじっとアークを見据えたまま、感情のない声で言葉を紡いだ。
「俺の想いは、あんたには迷惑なのだろうか?」
「シュウさん・・・」
後ろめたさに、アークの視線がシュウから逸れる。
シュウはふっと嘆息し、「まあ、男に告白されても困るだろうがな・・・」と溜息混じりに呟く。
「そういうわけでは・・・」

旅の間、気が付くと自分に向けられている、物問いたげな目。
特別な意味を感じ始めたのはいつからか。
誰にも心を開かないハンターが、唯一人に寄せた純粋で切ない想い。
アークとククルが最も恐れた「辛いだけの愛」の形が、彼の視線にあった。

「俺は、貴方の想いに足る人間ではない」
苦しげに顔を歪めるアークにシュウは冷静に言う。
「それを決めるのは、あんたではないだろう」
アークを愛したのは、シュウの心だ。心は、自分の意志や人の意見でどうにかなるものではない。
「俺は、あんたが好きだ。応えろと言われても無理だろうが、この想いを否定してほしくはない」

シュウの台詞に、アークは昼間のククルの言葉を思った。


『誰も傷付いて欲しくはないけど、だからと言って私達を愛してくれる人の想いを否定なんてしちゃいけない』


俯いていた顔を上げると、彼を見つめる悲しげな瞳と視線が絡み合う。
アークは、衝撃に身を硬くした。

シュウの声音はいつも通りの冷静なものだった。
だが、彼の瞳は深く傷付いた者のそれだ。

(結局、俺は傷付けてしまったのか・・・)
いつかのククルがそうだったように、アークは激しい自己嫌悪に陥った。


『辛いだけの愛なら、始めから無い方がいい』

それは、他人を思いやった故の結論ではなく、自分が傷付くことを恐れた利己的な手段でしかなかった。


いつしか、アークの瞳に涙が溢れ出していた。
それに気付いてシュウがゆっくりと近付く。
アークは俯いて目を瞬いて溢れる涙を払う。
だがシュウを傷付けたことに己もまた傷付き、心の痛みによる涙はすぐに滲み出てしまう。

シュウは、アークのすぐ目の前で立ち止まり、片手でそっとアークの頭を撫でる。
「困らせるつもりではなかったが・・・」
静かに言われた言葉にアークは何かを言おうとしたが、言葉が詰まって声を出すことができない。
何を言えば良いのかも解らないもどかしさに、アークは目の前にある胸に顔を寄せた。
その行為に驚き、身を強張らせたシュウだったが、やがて両手でアークの身体を抱き締めた。
「好きだ・・・」
掠れた声で囁く。

こんな風に、誰かに自分の感情を吐露したのは初めてだった。
人に愛されることを拒絶していた少年は、受け入れてくれるだろうか。
また拒絶されたらどうしたらいいのか、不安がよぎる。

アークの両手が、おずおずとシュウの服を掴む。
「ありがとう。俺を、想ってくれて・・・」
吐息のようにか細いアークの声は、シュウの耳にどう届いただろう。
アークの身体を抱く腕の力が一瞬緩んだ後、すぐに強い力が加えられた。
僅かな息苦しさを覚えたが、アークは抵抗せずにただ黙って瞳を綴じる。

『ありがとう・・・』
それだけで良かったのだ。

『辛くても、哀しくても、やっぱり人は誰かを愛して生きてゆくものよね』
聖母の優しい言葉が心に浮かぶ。

(その通りだね、ククル・・・)


ククル以外の誰かの傍で、アークは初めて安らぎを感じることができた。






■■■■■







翌日、アーク達一行を乗せたシルバーノアは、トウヴィルを経つため離陸準備に掛かっていた。

仲間達はすでに船内に乗り込んでいたが、アークだけはまだハッチの上だ。
彼の傍にはククルの姿がある。
滅多に神殿から出ない彼女が珍しく岸壁まで出て、アーク達を見送る。

「それじゃあ、行って来るよ。ククル」
「気を付けてね、アーク」
言葉を交わし、アークとククルはお互いの手を堅く握り合った後、名残惜しそうに離した。

「心配すんなよ、ククル。アークが無茶しないように、俺が見張っててやるから」
アークの背後からエルクが顔を出す。
「見張るって・・・、一番危ないのはエルクだろ・・・」
「うるせえな。あんただって充分危ないんだよ」
二人のやり取りに、ククルはくすくすと笑う。

アークとエルクが船内に下がると、すぐにハッチが閉まって船体が浮かび上がった。
アークを始め、仲間達は一様に窓の傍に寄り、眼下のククルを見つめる。
特にエルクは、食い入るように彼女を見つめていた。

ククルはアークからエルクに視線を移した後、微笑みを浮かべて全員に向けて手を振った。

”頑張ってね”

ククルの柔らかな唇が象ったメッセージは、全員に届いた。

浮かんだ綺麗な微笑みはメンバー達の心を癒し、温かな勇気を与えてくれる。
彼女がいるだけでこんなにも心地良い。
それは決してアークやエルクだけに言えることではなかった。


少しずつトウヴィルから離れて行くシルバーノア。
ククルの細い影が遠ざかってゆく。

彼らは、ククルの姿が見えなくなってもトウヴィルの岸壁を見つめ続けていた。


きっと帰って来る。

彼女の元に―――。


遠くなるトウヴィルの岸壁に佇んでいるあろうククルに、全員がそう誓った。






End

アークとククルの答え。答えて・・・るのかな?
何だか曖昧なような気もしますが(苦笑)。

でも、アークもククルもシュウとエルクを特別に意識はしているようですね。
それにしても、シュウもエルクも押しが弱いなあ(汗)。

次回で、長編も終わりのはず・・・。





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