傍観者





レオン・シルバーバーグへの報告の後、カゲがジョウイ・アトレイドと接触する機会はすぐに訪れた。

ハイランド軍の侵攻の予感にミューズの街に不安と緊張が広がる中、ハイランド軍の少年兵に扮したユアンとジョウイの二人が駐屯地に向かったのだ。
偵察のためだろうか。彼らが今更ハイランド軍に戻るとも思えない。

すぐさまレオンに報告し、二人で駐屯地に続く林道に身を潜めて成り行きを見守っていた。

そんな二人の目の前を少年兵と少女を含めた仲間らしき数人が走り去り、逆の方向からは黒き刃の力の波動がその凶悪な姿を現した。

「これは・・・」

突然、空を裂くかのように現れた紋章の力を具現化した凶暴なる刃に、レオンが感嘆の声を上げた。
唸り声を上げて刃が向かう先からはいくつもの悲鳴が上がり、圧倒的な力の前にそれは掻き消える。


「似ているな。何もかもが」

レオンの声が震えを帯びる。その中に感じ取れるのは歓喜の響きだ。
カゲは何の感情も篭らない眼で彼を一瞥し、また視線を黒き刃に戻す。
二人が同時に思い描いたのは、かつてクワバの要塞での戦闘で眼にした紅黒き死神の鎌だった。

ざわざわと怒鳴り声や足音が近づいてきた。
先頭を走ってくるのは少年兵だ。
後ろから「追え! 捕まえろ!」と取り乱した声が響く。

「あの少年を連れて来い」

そう言ってレオンは踵を返し、その場を離れた。





木々の間を縫うように少年は走っていた。
後ろを振り返ることはしないが、自分を追って兵士達が迫っている気配を感じる。

何としても逃げ延びなければ。
大切な人達のもとに戻るために。

その時、生い茂る草に足を取られバランスを崩した。
瞬間、口を塞がれると同時に動けないように拘束される。

「っ!!?」

「静かに」

聞きなれない鋭い声に、少年の全身が強張る。
逃れようともがくが男の手は揺ぎ無く、身動きもできない。

木の陰に身を潜めた二人の後方を、兵士達が走り去っていく。
彼らが向かう先には大切な人達がいるはずだ。彼らはもう無事に国境を越えただろうか。

こんな所で僕は死ぬのか――。

絶望感を感じながらもどうすることもできず、彼はただ捕らわれたまま項垂れた。



追っ手のハイランド兵達が森の向こうに走り去った頃、拘束していた力が緩んだ。
まだがっちりと腕を掴まれているものの、それ以外は自由になり、彼は自分を捕らえる者の姿を見た。
異国の装束を身に纏う、冷たくも鋭い眼を持つ男だ。話に聞く“忍者”だろうか。

「・・・貴方は?」

「貴方に面会を望まれる方が居られる」

「面会? 僕に?」

どういうことだろう。
戸惑う彼に、男はさらに続ける。

「ご友人方はすでに国境を越えられた。追っ手が引き返して来ぬうちにこちらへ」

「あ・・・はい」

とりあえずは命を奪われる心配はなさそうだが、展開に追いつけない。いったい何が起きているんだ。
だが先ほどの拘束からも、自分には男に立ち向かう力はないのは明白で、ここは従うしかなさそうだ。
そう判断し、男に連れられるままに歩を進めた。



男に続いて抜けた林道の先に、初老の男が立っていた。
威厳に満ちた無表情は父親以上の厳格さを醸し出している。

近づいてくる二人に気付くと、初老の男は目線だけをこちらに向けた。
忍者の視線が鋭利な刃物の鋭さならば、その男の厳しい眼は他を威圧する傲慢なものだ。どちらも無慈悲なまでに冷酷で、射抜かれると思わず足が竦む。
追っ手からは逃れられたが、もしかすると自分は更なる境地に立たされたのかも知れない。

緊張に強張る彼に、初老の男から重低音の声が発せられた。

「ジョウイ・アトレイド殿ですな」

「僕を知ってるんですか? 貴方は誰だ」

「ワシの名はレオン・シルバーバーグ、君が望むのであれば軍師として力を貸そう」

「え・・・?」

わけが解らない。彼らの狙いは何なんだ?
レオンと名乗る男と忍者を交互に見るが、どちらも冷たい無表情で真意を図れない。
ジョウイは途方に暮れて立ち尽くした。



カゲは黙ったまま、目の前のレオンとジョウイのやり取りを見守っていた。
ジョウイは突然のことに戸惑い、怯えてすらいるようだ。
しかし、レオンの口から言葉が紡がれるに従ってその表情は強張り、切れ長の瞳には苦痛と困惑が広がる。

レオンの話から、彼がどういう結論を出すのかは知ったことではない。
項垂れ、肩を落としながらもレオンの話に聞き入る少年を見つめながらも、カゲはただ傍観者という立場のみを貫いた。





■■■■■





都市同盟の一つ、ミューズ市――市街地の中にある診療所では、近頃美しい薬剤師が住み始めたという噂があった。
滅多に診察室には顔を見せず、主に奥の部屋で薬剤の調合をしているのだが、幸運にも顔を見る機会に恵まれた者は一目見た瞬間からうっとりする。それが無骨な傭兵ならば尚更、用もないのに診療所の周りをうろつき回るほどである。

窓の外にこちらを伺う熱い目線をちらほらと感じながら、診療所の主ホウアンは苦笑を禁じえなかった。
だがこれから訪れるであろう戦乱を思うと、彼らのささやかな安らぎを咎める気にもならない。

今、ミューズ市には都市同盟が揃いつつあった。
ミューズ市長アナベルの要請に応え、サウスウィンドウ、グリンヒル、トゥーリバー、ティント、マチルダ騎士団の代表らがジョウストンの丘での会議を開こうとしているという。
ハイランド軍の脅威がすぐそこに近づいているということを嫌でも感じさせる。


す、と音もなく湯呑みが差し出された。
視線を向けると、同居者の一人の怜悧な無表情があった。

「ありがとうございます、カゲさん」

ありがたく差し出された湯呑みを手に取ると、湯気の立つ熱いお茶を味わう。

いつも気配もなく現れる忍者にはいい加減慣れた。
同盟軍に探し人が居るという二人の同居者だが、一人はほとんど外に出ることなくホウアンの手伝いをし、もう一人は神出鬼没でいったいどこにいるのか解らない。そんな不思議な二人だが、ホウアンは彼らに疑いを抱くことはなかった。
度々訪れる、ホウアンの弟子であるトウタも初めこそ見知らぬ二人に驚いたものの、今では自然と受け入れている。
人の良さは師弟ともに尋常ではない。

我らが悪人であればどうするつもりだろうか。
カゲがそんな心配を抱いてしまうのも当然だろう。

盆に載せたもう一つ湯呑みは奥の部屋へと運んだ。
小さな一室で一心不乱に薬草と向かい合う背中に、静かに歩み寄る。

「カゲか」

顔も向けないまま、僅かな気配だけでその人物はすぐに気付く。

「休憩されませぬか」

「ありがとう」

天流は器具を置いて立ち上がると、強張った身体を解すように肩や腕を動かした。

カゲが天流と再会してから、一月は経つだろうか。
未だに天流の失われた三年間の記憶は戻らない。
ふとした瞬間に兆しが現れるものの、確かな形とはならないのがもどかしそうだ。
そんな気持ちを鎮めるためにも、天流はホウアンを手伝うことによって気を紛らわせていた。

「それで、何か動きはあったのか?」

お茶を啜りながら天流が問う。

「ミューズに都市同盟が集結しつつあります。ハイランド軍は依然国境付近に常駐し、都市同盟の動きを探っている模様」

「いつ来ると思う?」

「間もなくかと」

「勝つのは都市同盟か?」

「同盟軍が揃えばそうなりましょう。しかし、都市同盟も磐石ではござらぬ」

「綻びはどこから?」

「マチルダ騎士団でしょう」

そして傭兵隊の中からも。
だがその言葉は天流に届くことはない。

カゲの言葉を疑うわけではないが、天流はマチルダ騎士団がそう簡単に都市同盟を裏切るのだろうかと首を傾げた。自分の知識は三年前のものではあるが、都市同盟の中でも勇猛で誠実なる騎士団が仲間を裏切るようには思えなかった。
その疑問が顔に出たのだろう。カゲが言葉を続ける。

「多くの騎士達はマチルダ騎士の名に恥じぬ者達ですが、権力に目が眩む愚者はどこにでも現れるもの。規律に厳しい騎士団とて例外ではありません」

なるほど。
栄華に驕って身に合わぬ欲を抱く者は赤月帝国でもたくさん見てきた。騎士の街だからと言ってそのすべてが誇り高いわけではないのだろう。

天流はカゲに一つ頷き、空になった湯呑みを返すと再び調合の作業へと戻った。


そして数日後、カゲの言葉通りミューズ市の守りは綻びから崩れ行くこととなる。





■■■■■





アナベル市長が殺害された――!!


ハイランド軍との一度目の戦闘の後、辛くも勝利を得たその日の夜、信じられない報告が飛び込んできたのは真夜中のハイランド軍の侵攻と同時だった。
夜闇に包まれたミューズ市は大混乱に陥り、街のあちこちでハイランド兵と傭兵の戦闘が繰り広げられた。

「ホウアン殿、逃げて下さい!!」

同盟軍の兵士が診療所に飛び込むや、そう叫んだ。
昼間の戦闘で足りなくなった薬の調合を夜を徹して手掛けていたホウアンと天流は、兵士の声で作業の手を止めた。

「何があったんです?」

「夜襲です! アナベル市長の訃報も聞きました。真偽は自分には解りませんが、すぐそこにハイランド軍が迫っているのは間違いありません! どうか避難を! サウスウィンドウ市が我らを受け入れてくれます!」

そう言い置くと、兵士は夜の街に飛び出した。これからミューズ市民にも避難を促すのだろう。窓の外には慌しく兵士達が走り回り、着の身着のままの市民が逃げ惑う様が見える。

「テッドさん、逃げて下さい」

「ホウアン先生は?」

「私は医者ですよ、怪我人を置いて逃げられません」

ホウアンの穏やかな表情には、毅然とした意志があった。
ミューズ市に残ることがどれほど危険なことか、解っているからこその決断。
彼の想いが解らないわけではない。いや、むしろ解り過ぎるほど解る。

強い雨のグレッグミンスターを逃げ去ることしかできなかった記憶は、今の天流にはあまりにも生々しい。
実際には三年前のことなのだが、彼の記憶はその時のまま時間が止まっているのだ。

テッドを置いて行きたくなどなかった。
ずっと一緒にいたかった。
その想いは天流の中で今も強く存在する。

――だが、今天流の中にはホウアンの気持ちを理解すると同時に、彼を連れ出さねばならないという確信にも似た思いがあった。
ここで彼を失ってはいけない。“星”を落としてはいけない。
この思いがどこから来るのかは解らないが、それを考えている余裕はなかった。


「ミューズ市民を見捨てられない気持ちは解りますが、貴方は同盟軍の医者でしょう。同盟軍と共にあるべきです。貴方を必要としているのは、彼らなのだから」

「それは、そうですけど・・・」

ホウアンにもその思いはあったようで、思慮深い表情が葛藤に歪んだ。

その時、戸口から現れたのはカゲだった。

「主、医師殿、ミューズは落ちます。避難しましょう」

カゲの手に握られた武器から滴る血に、ホウアンの表情が強張った。

同盟軍とハイランド軍の戦争が始まったのだ。そしてこれから戦禍はさらに拡大していく。
ミューズ市はまだ、戦争の入り口でしかない。その先には、助けられるはずの命が無数にあるのだ。

「・・・行きましょう、サウスウィンドウへ」

苦渋を浮かべながらも、その瞳は決意に満ちる。



――そうして三人は、混乱の中のミューズの街を出た。





ミューズ市から南に進んだ所には、コロネの町がある。
その港から出る船で湖を渡ってクスクスの町に向かい、更に南下すればサウスウィンドウ市へと辿り着く。
だが、コロネの町に向かう道すがらにも、疲労や負傷によって倒れるミューズ市民や同盟軍兵士などが後を断たず、彼らの救助をしながらの旅は大幅に時間を費やしてしまった。

ようやく着いたコロネの町はハイランド軍の支配下に置かれていた。港は封鎖され、町中に闊歩するハイランド兵は威圧的な態度で町の人達を脅かす。
船乗り達は自分の船に近づくことも許されず、ハイランド軍への不満と恐怖に歯を食いしばるしかないようだ。


「困りましたね。かなり遠回りになりますが、ラダトの街に向かいましょうか」

湖を渡るのが無理だと諦め、ホウアンが別のルートを提案する。

ラダトはミューズ市の東にあるトトの村を通り、遥か南下した先の大きな橋を超えた所にある街だ。
デュナン湖を半周するほどの距離を歩かねばならないが、他に方法がないのだから仕方がない。

コロネからトトの村を通過してラダトの街に辿り着くまでには数日を要した。
そして辿り着いたラダトの街で情報を集めると、サウスウィンドウの街がハイランド軍によって制圧されたという話を聞かされた。それを裏付けるかのように、ラダトの街の中にも時折ハイランド兵の姿が見える。
コロネのように制圧とまではいかないようだが、ラダトの住人達にもピリピリとした緊張感が漂っているようだ。

「同盟軍の人達はどこに行ったのでしょうか」

見渡すも、街の中に同盟軍らしき人影はない。
この状況ではサウスウィンドウに行くのは危険と判断し、仕方なくラダトに滞在することに決めた。

腰を落ち着けると決めるや、ホウアンはさっそく宿屋を簡易の診療所として医者としての腕を振るい始めた。


ホウアンをラダトに残し、天流はカゲと共にサウスウィンドウへと向かった。

ハイランド軍の支配下に置かれたサウスウィンドウは完全に閉鎖されていたが、カゲの助けがあれば街の中に入り込むのは簡単だった。

本来は活気溢れる大きな街であろうサウスウィンドウだが、今は恐怖と哀しみに満ちていた。
市庁舎前には市長グランマイヤーの変わり果てた姿が無残に晒され、街を闊歩するハイランド兵士は横柄な態度で人々を虐げる。

これほどまでに惨い光景を眼にしながらも、天流は自身が酷く落ち着いていることに気付く。
ここ数日間天流を翻弄してきた右手の紋章が、街に入った時から酷く静かなのだ。それはハイランドにいた時と同じくらいに落ち着いている。
ソウルイーターを抑える何らかの力がこの街にあるのだろう。この街を脅かすハイランド軍の中にあるもの。

それが何なのか確かめてみたかったが、天流は様子見に訪れた市庁舎付近に立つハイランド兵士の中に見知った顔を見つけてしまった。シードの家にいる間、何度も訪ねてきた兵士達。彼らがいると言う事は市庁舎の中にはシードやクルガンの姿もあるのだろう。下手に近づけば見つけられてしまうかも知れない。

仕方なく断念し、同盟軍に関する情報収集に専念することにした。





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ラダトの街に戻った天流とカゲはすぐさま宿屋の一室、ホウアンの部屋に向かった。

「おや、お帰りなさい。無事で何よりです」

二人が出かけて二日ほどが経つ。天流達の力は知っているが、情勢不安の現状ではやはり心配だった。
夜遅くとはいえ怪我一つなく帰って来てくれた天流達の姿に、ホウアンはほっと胸を撫で下ろした。

「ホウアン先生、同盟軍はノースウィンドウに集結しつつあるようですよ」

「ノースウィンドウですか。確かあの街は随分前から廃墟となっていましたね」


十年以上もの昔、突如現れた魔物によって一つの街が滅ぼされたことがあった。
街に住む人々は一人残らず死に絶え、平和だった街はわずかな時間で廃墟となった。
それが、ノースウィンドウだ。

制圧されたサウスウィンドウから逃れた同盟軍は北西の丘の先にそびえるノースウィンドウの廃墟へと逃れ、その城を拠点と決めたという。
そしてサウスウィンドウに集結するハイランド軍は、ノースウィンドウに攻め込む準備を整えている。

この戦争で同盟軍が敗れれば、ミューズ、サウスウィンドウの兵が根絶やしとなるだろう。それは都市同盟の戦力が半減することを意味する。
果たして同盟軍に勝算はあるのだろうか。

傭兵の砦、ミューズ市の攻防とその目で見てきた天流は今の同盟軍に勝算はまずないと考えていた。
同盟軍は決して無能ではないのだろうが、圧倒的に戦力に劣る上に決定的なものが彼らには欠ける。

軍主と軍師。
これまでその役割を果たしてきたミューズ市長アナベルと、サウスウィンドウ市長グランマイヤーはもういない。
軍の心臓と頭脳がなければ、軍隊として意味を持たない。

ハイランド軍が攻め込むまでの僅かな間にその二つを得なければ、同盟軍はここで終わる。





月の光が美しい夜。
夜風は冷たく、冷気が身体の芯まで凍えさせる。

ただ立っているだけでも足元から冷えてくる寒空の中、ラダトの街の東に掛かる橋の下では冷たい川の中に人の姿があった。
少年が一人と少女が二人、一心不乱に川の中で何かを探している。

少女の一人が「もうやめよう」と促す声が時折聞こえるが、別の少女はそれを聞き入れようとしない。
いったいいつからこうしているのだろう。彼女達の手足の感覚はすでに麻痺しているであろうに、決して諦めようとはしない。

やがて、探し物を見つけた彼らから歓声が上がる。
そんな三人に近寄る一人の青年。
交わされる会話を聞きながら、カゲはそっとその場を離れた。

同盟軍が頭脳を手に入れた。間もなく心臓も得るだろう。
それを天流に報告するために。





■■■■■





軍主と軍師を得た同盟軍は、結束力と士気が格段に違った。
ソロン・ジー率いるハイランド軍との戦闘で、彼らは見事な勝利を収めたのだ。


天流は同盟軍の勝利を見届けた後、ラダトの街に戻ってホウアンにそれを告げた。
やがてサウスウィンドウからもハイランド兵が引くだろう。
ホウアンを同盟軍のもとに送り届けても安全だ。

天流の言葉にホウアンは安堵の笑みを浮かべ、感謝の言葉を述べた。

「色々とありがとうございました。お二人にはお世話になりましたね。もし宜しければテッドさんも私とともに行きませんか? 貴方の力を同盟軍にお貸し頂きたいのです」

「申し訳ありませんが、僕は都市同盟に属しませんので」

「そうですか・・・残念です」

もしかしたら、と思ったのですが。
ホウアンは自嘲気味にそう言って、諦めのため息をついた。

惜しいとは思う。天流の力が欲しい、と。
だが同時に医者としての直感なのか、彼を戦争などに巻き込むべきではないとも思う。
天流の傍に従うカゲの、主を慈しみ、守ろうとする真摯な想いに感化されたのだろうか。



翌朝、ホウアンは天流とカゲに護衛されてノースウィンドウへと辿り着いた。

古びた城は長い年月を放置されていたため、みすぼらしくもある。しかし頑強だ。
この城が同盟軍を守る最後の砦。
これから少しずつ、自分達の手でこの城を立て直せば良い。

入り口の前で止まった天流とカゲを振り向き、ホウアンは深々と頭を下げた。

「本当にありがとうございました。お二人の旅のご無事を祈ります」

「ホウアン先生も、どうかお健やかで」

「また、いずれお会いしましょう」

「・・・そうですね」

もう一度頭を下げ、ホウアンは門をくぐり抜けた。

城の中にその後姿が消えてゆくのを確認し、天流とカゲは同盟軍の新たな拠点に背を向ける。



今度会う時――僕は彼らの敵だろうか、味方だろうか。
今はまだどちらにも協力する気はないが、いずれ選択する時が来るかも知れない。

できることなら、シード達の敵にもホウアン達の敵にもなりたくはないものだ。



END


今のところ坊ちゃんはあくまで傍観者です。
ルカ様達がハイランドに戻ってからが本格的な始動になるのかな。



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