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比翼連理の旅人
ならず者の集まりである白騎士団の下級騎士の男達数人は、昨日騎士団領に訪れた“夫婦”と噂される“男女”の姿を目にしていた。
二人がこの宿屋に入ったことも、“妻”の体調が悪いことも、この宿に居座り、様子を窺っていた彼らは知っている。
そして、現在“夫”は外出していることも。
白騎士団はあまり規律が厳しくはない。
団長であるゴルドーに媚び諂えば、誰でも騎士になれる。
騎士の権威を持てば、大抵のことは自分達の思い通りだ。
例えば気に入らないからと誰かを殴ったり、誤って誰かを殺したり、気に入った娘に乱暴しても、彼らが騎士である限り被害者は泣き寝入りをするだけだ。
所業が上官や赤騎士、青騎士にばれて捕まっても、被害者が訴えても、ゴルドーに金と女を与えれば罪は軽くなる。上手くいけば無実にもなる。
金さえ積めば何をしても良い。それが彼らの常識である。
だから、“夫”の留守に“妻”を辱めることも――彼らには楽しい遊びでしかないのだ。
男達は騎士団の権威を傘に宿帳を調べ上げて男女二人が宿泊する部屋を探し出し、一つ一つ確認していく。そして、鍵が閉まった一部屋が目的のそれだと突き止めた。
次はどうやってマスターキーを奪うか。
そんな時、従業員の一人が彼らが狙う部屋に訪れた。
クライブから頼まれ、天流の様子を見に来たのだ。
ノックをしても返事がなく、女性はマスターキーを使って部屋に入る。
部屋の奥の寝台には、苦しそうな息遣いを繰り返す少女(彼女の目にはそう映る)の姿。
(可哀想に、奥様・・・せっかくの新婚旅行で病気になってしまって・・・。旦那様も心配でしょうね)
彼女達の間でどれだけ話が膨れ上がったのだろうか。
すでにクライブと天流―ティアは夫婦だと決定付けられているようだ。
熱で温もってしまった額の布を氷水で冷やし、氷嚢を取り替えていると、今まで朦朧としていた天流の瞳が彼女を捕らえた。
一瞬戸惑ったようだが、服装から宿の従業員であることに気付いて緊張を解く。
「・・・済みません。お世話を掛けます」
「気にしないで下さいな。早く良くなって下さいね。ご主人も心配してますよ」
ゴシュジンとは誰のことだろう?
頭の回転が速い天流でも、“ご主人”とは変換できなかった。
見れば見るほど綺麗な少女だと、女性は内心でほぅと感嘆の溜息をついた。
熱によって潤んだ瞳が一層の艶やかさを抱き、顎に届く長めの横髪が汗で張り付く様は扇情的だ。まだ“少女”である故の色香が漂う。―――天流はれっきとした少年だが・・・。
「それではお大事に」
女性は一礼すると、静かに部屋を出て行こうとした。
だが、開けようとした扉が外側から強引に開け放たれたかと思うと、一斉に何人もの白騎士服を纏う男達が乗り込んできた。
「きゃあ! 何ですか、貴方達は!!」
女性の悲鳴に天流は慌てて身を起こそうとしたが、高熱によるひどい目眩に襲われる。
それでもその手は寝台脇に立て掛けていた棍を握り締めた。
目眩を振りきるように扉に目を向けると、そこには数人の男達が下卑た笑いを漏らして天流を見つめていた。
嫌な視線だ。
背筋を悪寒が走る。
女性は恐怖に真っ青になりながらも、「ここはお客様のお部屋です!出て行って下さい!!」と気丈な態度で男達を追い出そうとする。
しかし、力と数に圧倒的に勝る男達には、女性の言葉など小鳥の囀り程度のものだ。
「うるせーよ!」
一人がそう吐き捨てて女性の顔を殴った。
続いて別の男が突き飛ばすと、女性は為す術もなくその場に倒れる。
「やめろ!」
怒りのあまり、棍を持つ天流の手が震える。
だが、感情とは裏腹に彼の身体は思うように動いてはくれない。寝台に身を起こすのがやっとの状態だ。
「へえ、こりゃ別嬪さんだなあ」
「だろ? あんな優男のものなんて勿体ねえよな」
「確かに、一人の男に独占させるには惜しい上玉だ」
「ちぃっとガキだがな」
男達は一斉に笑い声を上げた。
彼らの会話は所々意味不明だ。
しかしどんな理由があれ、彼らの無礼な態度や女性に対する暴力は許し難い。
この体調では全員を相手取るには辛いかも知れないが、負けるつもりもない。
棍を構え、琥珀から真紅へと色を変えた瞳で男達を睨み据えた。
「そんな棒っきれで何しようってんだい、お嬢さん?」
「いいから俺達と遊ぼうぜ」
天流の怒りも、彼の戦闘力も知らぬ男達は、ニヤニヤと嘲笑を浮かべる。
何の力も持たない美しい“少女”を、これから思う存分甚振るのだと思うと、男達は興奮した。泣き、叫び、許しを請う様を眺めながら、満足するまで蹂躙する。もう何度もしてきたことだ。しかも今回の獲物はなかなかの上玉。
楽しい饗宴が始まる。
そう信じて疑わなかった。
男達の注意が天流のみに向けられた隙に、女性は部屋を出てロビーに走った。
「助けて! あいつら、ティアさんの所へ・・・っ、ティアさんがっ!!」
切羽詰った女性の叫びに、客や従業員達が一斉に彼女を見やり、その姿を見て誰もが瞬時に事情を悟った。
女性の赤く腫れ上がった頬は、明らかに殴られた痕だ。そして病身の女性に危害を加えるような連中など、あいつらしかいない。
「誰か、騎士団の方を呼んで来るんだ!」
「は、はい!」
誰かが叫び、何人かが外に飛び出す。
一般市民でしかない自分達には、仮にも騎士である男達を止める権限はない。でも赤、青騎士や白騎士団の上官ならば、きっと助けてくれるはずだ。
そう思って騎士団の姿を探し、駆け出す人々。
せっかく新婚旅行でマチルダに訪れてくれた若い夫婦に、嫌な思い出を残して欲しくはない。
勘違いからの結束は鉄より固かった。
どう見てもか弱い少女が大の男数人を相手に歯向かうとは、男達は想像もしなかった。
高熱で普通に立つことすらままならず、傍目にも身体がふらついているのが解るのに、少女は襲い掛かる男を的確に棍で打ち据えていく。すでに、先ほど女性に暴力を振るった二人の男は真っ先に情無用の攻撃を受けて気絶している。
「この小娘が! 俺達白騎士団に逆らってただで済むと思っているのか!?」
「お前達のような者が騎士とはな。名高きマチルダ騎士団も底が知れる」
辛辣に言い放つ。
いきなり襲い掛かってきた上に女性に対しての暴力、さらに自分を“娘”だと勘違いしている男達に天流は本気で怒っていた。が、「僕は男だ!」という主張は自分が情けなくなるため口には出さず、彼は漢らしく拳(正しくは棍)で語った。
だが、いくら天流が比類無き強さを誇っていても、今の体調では幾許もせずに限界が訪れた。
いつも手足のように自在に操る棍が、ひどく重い。一人、また一人と打ち据える毎に体力は大幅に削られ、壁に背を預けてようやく立てているという状態だ。
追い詰めた。
男達は壮絶な笑みを浮かべた。
ここまで虚仮(こけ)にされたのだ。簡単に許しはしない。
理性を失った男達の目は、獲物を前にした餓えた獣のようにギラギラしていた。
赤騎士団長カミューは、数人の部下と共に街を警邏中だった。
彼らが警戒するのは街のゴロツキばかりではない。いや、ゴロツキと一括りにしても良いかも知れないが、とにかくこの街の平和を脅かす輩が騎士団の中にも居るというのは嘆かわしい限りだ。
「隊長、何かあったのでしょうか」
部下の一人がふいにそう言った。
彼の視線の先を辿ると、宿屋の傍でおろおろと立ち尽くしている少女の姿があった。服装からしてどこかで働く従業員だろう。
カミューは迷うことなく少女の元に足を向けた。
「お嬢さん、どうしました?」
少女は泣きそうな表情で声のした方を向く。
騎士団を呼んで来いと言われて飛び出したが、どこへ行けばいいのか解らずおろおろと立ち尽くしていた。城には他の誰かが向かったし、運動の不得手な自分では城に着くのに時間が掛かり過ぎる。しかし他に騎士の居る場所など知らない。
どうしようとおろおろしていると、柔らかな美声が聞こえた。
振り向いて、彼女は息を飲んだ。
目の前に立つのはまさしく――王子様vv スラリとした長身、整った美貌、柔らかな微笑み、何と言っても纏う服は赤騎士団、しかもかなりの上官と思われる。後ろに付き従う赤騎士達も煌びやかで、どこの貴公子のお忍びですか?と問いたくなる。
「あ、貴方はもしかして・・・」
「カミューと申します。レディ、可愛らしい顔が哀しげに曇っているわけをお聞かせ願えますか?」
(やっぱり、赤騎士団の隊長、カミュー様!)
これでお客様を助けられる。あの男達に罰を与えられる。目の保養にもなる。
何て運がいいのだろう。―――色んな意味で。
哀しげに曇っていたレディの可愛らしい顔は、その瞬間燦然と輝いた。
少女から事の次第を聞いたカミューの対応は迅速だった。
話の途中からすぐに事情を察し、部下に合図を送ると、騎士達は隊長の意図を汲んで宿屋へと駆け込んで行く。
カミューは少女を落ち着かせて自分も乗り込もうとした所で、ふと上を見上げた。
宿の一室の窓が開き、細い後姿が見える。その奥からはくぐもった男の怒声。あれが問題の部屋かと瞬時に察する。少女は男達の魔手から逃げ、窓際に追い詰められたのだろう。そして何らかの衝撃で窓が開いた。
カミューは咄嗟に叫んだ。
「レディ!!」
窓の下から聞こえた声に、天流はそちらに視線を向けた。
“レディ”って何??
見ると赤い服を着た身なりの良い青年がこちらを見つめている。
「私が受け止めますから、飛び降りて下さい!」
両手を広げる青年の姿に、すでに限界を超えていた天流は迷うことはなかった。
飛び降りる時に危険だろうと棍を手放し、窓から身を乗り出すと躊躇いなく青年の腕の中へと飛び込んだ。
窓から飛び降りた少女を上手く抱きとめたカミューは、怪我はないかとその細い身体を素早く確認する。
男達に力尽くで破られたのだろう。夜着が所々ほつれている。片方の腕などは肩から破れかけていた。
頬を赤くして苦しそうに喘ぐ少女の薄い服越しからも高い熱が伝わる。
なんて痛々しい。
恐ろしい思いをしたであろう少女への気遣いと、男達への怒りが沸き上がる。
「隊長、捕らえました」
開け放たれた窓から赤騎士の一人が顔を出して言った。
「よし、連れて行け」
「はっ」
これ以上暴漢達をここに置いておくことはできない。
しかし、とカミューは複雑な表情となった。
(――どうせ奴等は罪にならないだろうな)
こんなか弱き少女に乱暴を働いても、彼等が白騎士団である限り赤騎士である自分では罰を与えることができない。そもそも白騎士団に権限を振りかざすことができるなら、自分もマイクロトフもあのような者達を騎士に迎え入れたりはしないのだ。
(済みません、レディ・・・)
腕の中の少女を見つめ―――思わず見惚れてしまった。
(これは・・・なかなか・・・)
紅潮した頬に長い睫が陰を落とし、薄く開いた唇から熱い息が漏れる。汗ばんだ頬には一筋の黒髪が貼り付いて、一層の艶が増す。
状況を忘れ、カミューは思わずその唇を味わってみたいと思った。こんな時に不謹慎な、と騎士の理性が窘めるが、騎士である前にカミューも健康な男である。
(いかんいかん、第一彼女は人妻ではないか)
宿屋の従業員の少女から聞いた言葉を思い出し、邪な煩悩を追い払う。
カミューは騎士団服を脱いで少女を包み、そっと抱き上げて宿屋へと入って行った。
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「貴方のおかげで助かりました」
礼儀正しくそう言って差し出された右手を自分のそれと重ねながら、クライブは無愛想に「いや」とだけ言った。
そんな態度に気を悪くすることもなく穏やかな表情で頭を下げ、青騎士団隊長マイクロトフは的確に部下に指示を与えて切り捨てられた魔物の死体を片付けていく。
ヒックスを狙った魔物を一発の銃弾が貫き、銃声を合図にするように斬りかかった青騎士達の剣が魔物達を斬り伏せていった。銃声に動揺した魔物達が全滅するのに、そう時間は掛からなかった。驚き、慌てる魔物は多少力が強まっていても統制の取れた騎士達の敵ではなかった。
四半刻も経つ頃には、林道に静けさが戻っていた。
魔物に襲われた商隊は、傷付き倒れた戦士の少年ヒックスの応急処置を行うが、血は止まりかけているようでもやはり傷口が深い。しかし商人も騎士の中にも、癒しの術を持つ者はいない。
「城に運んで手当てをしましょう」
不安そうにヒックスを見つめるテンガアールに青騎士の一人が優しく声を掛ける。
「お願いします」と言い掛けたテンガアールを引き寄せ、クライブはその耳元に囁いた。
(俺の泊まっている宿屋にティエンがいる)
「ええ!? ティ・・・っ」
“ティエンさんがあ!?”と叫びかけたテンガアールの口をクライブの手が覆う。
騎士の前で堂々と天流の名を出すな。
鋭い瞳に睨まれ、テンガアールは慌ててコクコクと頷く。
(宿ではティアと名乗っている)
(・・・女の子みたいな名前だね)
(・・・・・・そうだな)
宿に運ぶ、というクライブの言葉にマイクロトフは「解った」と頷き、ヒックスをその背に背負った。
クライブは大きな武器を持ち、テンガアールは女の子なのでヒックスを連れて移動するのは難しい。それならばとヒックスを背負うマイクロトフの好意を素直に受け、クライブの案内で四人はマチルダへの道を辿って行った。
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「何だ、この有様は」
部屋の入り口に立ち、クライブは唖然と呟いた。
朝までは確かに綺麗な部屋だったのに――見るも無残な光景がそこにあった。
布類はビリビリに破られ、調度品は壊れて破片が飛び散り、あらゆるものが散乱している。
「クライブ様、ティア様はこちらの部屋にいますよ」
別の部屋から宿の女性が顔を出して手招きする。
部屋に入って誰より驚愕したのは、マイクロトフだった。
「・・・何故、お前がここに居るんだ?」
「それはこちらの台詞だよ、マイクロトフ」
寝台に横たわる天流の傍には、カミューがいた。何だか甲斐甲斐しく天流の看病をしている。
「お前は誰だ」
警戒の眼差しを向けるクライブに、カミューはどこか複雑な色を浮かべた。
(彼がティア殿の夫か・・・)
女性達が騒ぐ程のことはある。自分も決して負けているとは思わないが、文句の付けようのない美青年だ。
クライブはというと、カミューには興味が失せたかのように天流の傍に歩み寄った。
「ティ・・・ア、起きてくれ。お前に頼みがある」
ティアって誰?
声にならない問いに、クライブはそっと目を逸らし、天流にだけに聞こえるように小さく「偽名だ」と言った。
そして、クライブの手を借りて身を起こした天流は、懐かしい二人の仲間と再会した。
高熱のある身で男達と大立ち回りした上に、ヒックスの怪我を治すために高位の流水の紋章を使用した天流は、それから2、3日ほど寝込むはめになった。
その傍には常にクライブが寄り添い(単に天流が回復するまで暇だっただけ)、彼が妻を優しく労わる様子に宿屋の者達は仲睦まじい夫婦の幸せを心から祈ったのだった。
「しかし惜しいなあ」
「? 何がだ?」
今日も天流とヒックスの見舞いに来た赤青騎士隊長は、妻を看病する夫と彼を世話する彼女の仲睦まじさを微笑ましく見守っていた。
そんな時、溜息混じりに呟いたカミューの言葉にそちらに視線を向けたマイクロトフは、友人の珍しくも切なげな表情に目を丸くする。
「ティア殿・・・私好みの女性なのに・・・もう人妻だとは・・・」
はあぁ〜〜〜と長い長い溜息をつく。
マイクロトフの生真面目な顔に呆れが浮かぶ。
「お前・・・」
「何だ、その顔は。お前だって実は好きだろう? ティア殿のような女性」
「・・・・・・」
確かに、ティアへの印象は良いものだ。
自分自身も高熱で辛いだろうに、懸命に紋章を発動させてヒックスを癒した少女。初めに出会った騎士があのような者達では、マチルダ騎士団へのイメージも悪いはずなのに、マイクロトフやカミューに対して礼儀正しく接してくれた。
まだ年若いことをのぞけば、まさしく理想の女性と言えるだろう。
それなのに、あの男共は己の汚らわしい欲のために少女を蹂躙しようとした。
ギリリと握り締めた拳がさらにきつくなる。
結局、あの男達への咎は無きに等しかった。部下の不祥事が表沙汰になれば、ゴルドー自身の責任も問われる。女性にたいする暴力、恥ずべき行為を、金や自分の保身のために事件そのものを揉み消す。
このような不条理が許されて良いのか。
ちなみに余談だが、この時の人々の怒りはあるオプションによってやがて薄れていくことになる。
不安定な状態で、ソウルイーターを完全には操れない天流の怒りを買えばどうなるのか。
当然ながら生と死の紋章の圧倒的な闇の力は、天流の怒りのままに男達へと矛先を向ける。誰にも気付かれないうちにこの世でもっとも強い闇の呪いを受けた男達は、この先街を一歩でも出れば闇の波動に触発された魔物達に襲われることになる。
すべての運に見放された男達に、街の人々や心有る騎士達は溜飲の下がる思いをするのだった。
ここに、知られざる“トランの英雄の復讐”は果たされるのである。
だがしかし、そんなことは今のカミューやマイクロトフは知る由もなく、ただただ悔しさを噛み締めていた。
せめて、彼らのことが目の前の可憐な少女の心の傷にならないように祈るだけだ。
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数日後、天流達の旅立つ日がきた。
クライブの献身的な看病によってすっかり元気になった天流は、クライブ、ヒックス、テンガアールと共に多くの人達に見送られてマチルダ騎士団領を出ていく。
見送る人達からは「いつまでもお幸せに」とか「またお二人で来て下さいね」とか「その時は人数が増えてるかしら」とかわけの解らない言葉を掛けられた。
加えて天流は二人の騎士にえらく複雑で切なげな表情をされ、固く固く手を握り締められ「後数年早くここに来て下さっていれば・・・っ」と未練の込められた言葉をもらったのだった。
本当に変な街だった。
それが元解放軍達の共通した感想だ。
マチルダ騎士団領からしばらく進んだところで、天流、クライブ、ヒックスとテンガアールは短い言葉を交わして三方に別れた。
「また会おう」という約束はなかったが、旅を続けていればまた道が交わることもあるだろう。
その辺のことはいずれ何とでもなるから良いとして。
「ねえ、テンガアール」
「なあに、ヒックス」
「何かさあ、マチルダの人達、おかしな誤解してたよね?」
「だよね、あの人達の態度ってまるでクライブさんとティエンさんが・・・」
その先は恐ろしくて続けられなかった。
人々の誤解と勘違いと行き違いを正確に感じ取った唯二人の若者は、それからしばらく無言のまま歩を進めた。
真実をマチルダ騎士カミューとマイクロトフが知るのは、それから2年と数ヶ月後のことである。
大物なのは最後まで二人を夫婦と信じて疑わなかったマチルダの民か。
それとも誤解されていることに最後まで気付かなかった、比翼連理の旅人か――。
END
クライブ、ヒクテン、マチルダ騎士の登場。以前より書きたかった話の1つです♪
このために「空の彼方」でクライブと坊ちゃんは仲良しという伏線張ったわけで(笑)。
それにしてもクライブさん、結構巻き込まれ型?(苦笑)
サブタイトルの「比翼連理」は当然・・・クライブさんとティアちゃん(笑)のことです。
ヒックスvテンガアールは「比翼連理」というより「割れ鍋に閉じ蓋」って感じかな(笑)
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