3.儚い願い




テッドと出会って数週間が過ぎた。

最初はぎこちなく、徐々に会話をするようになって。
今では普通に談笑できるようになった。
彼は、本当に多くのことを知っている。
地図にも載っていないような村の話。遠い国の伝承。
彼の旅の話はとてもおもしろくて、僕はいつもテッドに旅の話をねだった。

打ち解ける前は無口で頑なだった彼だけど、根は朗らかな性格らしく、
「仕方ないなあ」と言いながらも笑って話をしてくれる。

同年代の他の皆と話すより、テッドとの会話の方がずっと楽しい。

僕はいつしかテッドのことが大好きになっていた。

でも彼は時々、ひどく辛そうに顔を顰めていることがある。
気付かれないようにしているみたいだけど、何だか解ってしまう。
声を掛けると一瞬のうちに消えるそれは、深く暗いもので。
そういう時にはテッドを遠く感じる。

何をそんなに怖がっているのだろう。
僕達では力になれないのかな。

気にならないわけじゃないけど、やはり聞いてはいけないことなんだと思う。
寂しいけれど、テッドが抱えるものを無理に聞き出して、
僕に解決することができるのかと聞かれれば無理だろうから。

ただ・・・少しでも彼が安らいでくれればと願う。





俺を拾ってくれたテオ・マクドールって将軍の家に来て数週間。

ここは居心地が良い。
温かくて優しくて明るくて・・・すごく懐かしい。
変だよな、明るくて仲の良い家族なんて何度も見てきた。
けれどそこに居たいと願ったことは・・・・・・あるにはあるけどさ。
それでも右手のことを考えると、さっさと姿を消そうって気になったもんなんだ。

そんな俺が今回に限ってそれができないのは・・・たぶん、こいつがいるから。
テオ・マクドールの息子で十二歳になったばかりの天流・マクドール。
この年齢の子供にしては賢いのは、やはり英才教育ってやつのせいか?
いや、でもこいつの賢さってのは、ただ勉強だけやって知ったかぶっただけの
中身のない知識じゃあない。

俺の話を琥珀の瞳を輝かせながら真剣に聞いている天流は、
知識欲が旺盛で好奇心も強い。
でも自分のそんな部分をコントロールする術を身につけてるのか不躾な所はなく、
色々と聞かれても不快な思いはしない。

だからついつい話してしまうんだけど。
これがまた聞き上手なもんだから俺まで楽しくなる。
なるだけ他人に関わるのを避けていたのに、こいつにかかるとどうも調子が狂う。
それが嫌じゃない自分にも戸惑う。

参ったなあ。
俺、こいつのこと好きだわ・・・。
けど・・・そう思ってしまうのは嬉しいことだけど・・・
・・・それ以上に怖い。

俺の右手に息づく死神が、こいつを捕らえようとしないかと。

でも、頼む・・・。
もう少しだけここにいさせて欲しい。

こいつのそばに・・・。





紺碧の青空に浮かぶ真昼の月のように、儚く不確かだけれど

あいつと一緒にいられる未来を望む心は

もう、育ち始めているから・・・




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前半は坊ちゃん、後半はテッド視点の独白でした。
お互いに好意を抱いているのになかなか一歩が踏み出せないのです。
ちなみに最後のは二人の思いです。

次は親友宣言を(笑)



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