第2章『光の精霊』

2.精霊との出会い


フルメタルハガーとの戦闘で何とか勝利を納めたデュラン達だったが、敵の最期の攻撃ともいえる爆発によって、全員が意識を失っていた。

やがて意識を取り戻した彼らは、お互いの無事を確認し合う。
「やれやれ酷い目に遭ったもんだ」
服の埃を払いながら、さすがに疲れたようにホークアイが呟く。
「あーあ、俺は最後何もしてねーや」
アンジェラに上体を支えられながら、不満そうに口を尖らせるデュラン。その頬はほんのりと赤くなっている。
「皆さん、無事で良かったですね」
安堵の微笑みを浮かべてリースが言うと、ケヴィンもそれに同調して、
「うん、オイラもそう思う」
「そうでち、そうでち。すなおにそれをよろこぶべきでち。それもこれもこのシャルロットのどりょくのタマモノでちねっ」
威張って言うシャルロットだが、別にシャルロットだけの努力のお陰ではない。それでも誰も何も言わないのは、無駄だと解っているからだという他にはないだろう。

その時、爆発によって崩れた場所から小さな光が現れた。
「何だっ!?」
警戒も露に身構えるデュラン達に、陽気な声が掛けられた。
〈ういっス! オレッスよ、オレ! このオレが皆さんが探してるウィル・オ・ウィスプっス!〉
緊張感のない明るい声が響き、デュラン達は毒気を抜かれて警戒を解いた。
包んでいた光が消えると、光の精霊の姿が現れる。
それは、青白い炎を身に纏い、ユラユラと揺らめく人魂のような姿をしたものだった。
「お前が精霊なのか?」
〈ういっス! あのフルメタルハガーの体内に封印されてたッス! おかげさんで、やっと封印が解かれました。事情は皆さんが戦ってる間にフェアリーさん達からテレパシーで聞いたッス! いや、大変ッスね・・・。マナを救うためにも協力させてもらうッス!〉
快く仲間になることを承諾した光の精霊の言葉と同時に、デュラン達の内からフェアリー達が出て来て、ウィル・オ・ウィスプに問い掛けた。
〈ねえ、ウィスプさん。『光のマナストーン』は?〉
〈ちょうどこの真上、古代遺跡の奥深くに『マナストーン』はあるんスけどね、ちとここからじゃ行けないッス〉

ウィル・オ・ウィスプの言う古代遺跡とは、『光の古代遺跡』と言われ、滝の洞窟の真上に建っている。
かつてマナの女神が初めてこの世界に降り立った地として栄えた古代都市だ。
だがそこは周囲を崖によって囲まれているので、地上からは近付けないようになっている。
その『光の古代遺跡』の中に『光のマナストーン』はあるのだ。
今はその『光のマナストーン』は無事らしいが、それでも非常に不安定な状況であることは変わりなく、いつ『神獣』が封印を解いて復活するか解らない状態だと言う。

仲間となった光の精霊は、デュラン達それぞれの中に自身の力を注いだ。
〈やったね、アンジェラ! これで光の魔法が使えるようになるよ!〉
「えっ、本当に? やったあ!」
赤いフェアリーの言葉に、アンジェラの表情が輝く。
事情を知っているデュランとリースが嬉しそうに微笑んで、喜ぶアンジェラを見やる。
「それじゃシャルロットもつかえるんでちか?」
シャルロットが金色のフェアリーに問うと、〈もちろんよ〉という返事が返る。
すると、シャルロットはニヤリと悪巧みをするような笑いを浮かべてデュランを見た。
不穏な空気を察したのか、デュランは顔から笑みを消して、代わりに緊張したように視線をアンジェラからシャルロットに移す。
「な、何だよ、シャルロット」
怪訝そうなデュランの問いに、シャルロットは怪しい含み笑いを返し、
「ふっふっふ、デュランしゃん、あんたしゃんケガをしてるでちね?」
「あ、ああ・・・」
恐る恐る答えるデュランに、シャルロットは弾けたように声を上げて笑った。天使の笑い声とは程遠い意地の悪そうな笑いだ。

ふはははははっ!! ではシャルロットのじっけんだいになるでち! さあ、そのケガをなおしてしんぜようっ!

瞬間、恐怖に引き攣ったデュランを、アンジェラとホークアイが面白がって押さえ付ける。
「さあ、どうぞ」
「ごくろうでち」
うわあっ! やめろ、お前らっ! 離せよ、オイッ!
必死の形相で喚くデュランだが、しっかりと押さえ付けられて身動きが取れない。

「ケヴィン! リース! 助けてくれ!」
アンジェラとホークアイには言っても無駄だと悟って、ことの成り行きを見守るケヴィンとり―スに助けを求める。
しかし二人は顔を見合わせると、
「でも、手当ては受けた方がいいですよ?」
リースの優しく諭すような言葉にデュランの表情が情けなく歪む。
そのリースの言葉を引き継ぐようにケヴィンも、
「そうそう、きっと大丈夫」

「よくいったでち! さあ、カンネンするでちよ〜! いたかったらさけんでもいいんでちからっ! ひ〜っひっひっひ!!」


うわあああああっっ!!


悪魔の微笑みを湛えるシャルロットの呪詛のような言葉を聞き、恐怖に満ちたデュランの悲鳴が洞窟内に轟いた。

「ヒールライト!」
シャルロットから発せられた聖なる光がデュランを包み、傷付いた身体を癒していった。
「やったでち!」
シャルロットが歓声を上げ、ホークアイ達も安堵する。
とりわけアンジェラは嬉しくて溜まらないようで、
「良かったわね! デュラン」

全員の表情が喜びに満ちている中、デュランだけは恐怖のあまり青褪めていた・・・・・・。





■■■■■





一刻も早く仲間の精霊達を見つけ出すために、デュラン達はその場を後にすることにした。
「またあのモンスターだらけのみちをいくんでちか〜?」
冗談じゃないと言いたげなシャルロットの口調だったが、煩わしく思っているのは皆同じだ。
「それは嫌ね・・・」
「うーん・・・」

一行が首を傾げていると、ふいにホークアイが輪を離れた。
「どうかしたんですか?」
ホークアイの様子に気付いたリースが声を掛けると、振り返ったホークアイがある一点を指差して答える。
「見ろよ。さっきの爆発の衝撃で穴ができてる。近道できるんじゃないか?」
「えっ? ほんとうでちか?」
ホークアイのいる場所に全員が集まる。
そこにはホークアイの言う通り爆発によって開けられた穴があり、ここまで来る時に通った道が続いていた。確かに近道のようだ。
デュラン達は一も二もなくその穴を通った。

行き道の時ほど頻繁に出ないモンスター達を倒して、例の今にも落ちそうな橋の許に来ると、来た時同様デュランとアンジェラ、ケヴィンとシャルロット、ホークアイとリースがペアを組む。
意外と頑丈だということが解ったので六人一緒にその橋を渡って行くと、予想通り橋は六人の体重をしっかりと受け止めていた。

「デュラン、ケガ治って良かったわね」
アンジェラの嬉しそうな言葉に、デュランはあの恐怖を思い起こして身を震わせる。
「思い出させるな・・・」
今までになく低いその声に、余程恐ろしかっただろうデュランの心情が読み取れる。

その後ろではシャルロットがケヴィンに説教をしている。。
「あんたしゃんはでちね、もうちっとオトメゴコロというものをまなぶべきでち!」
「・・・はあ・・・」
ケヴィンは内心アンジェラとリースであればいざ知らず、シャルロットに乙女心などというものを理解できるのだろうかと思ったが、口には出さなかった。

そしてその後ろでは、ホークアイとリースが手を繋いで歩いている。
他の二組とは違ってお互いに口を開かず、黙々と橋を渡っていた。
リースは不安そうな瞳で自分の一歩前を行くホークアイの後姿を見つめ、意を決したように話し掛ける。
「あ、あの、ホークアイさん? まだ怒っていますか?」
「・・・・・・何が?」
短いホークアイの応答にリースは怯んだ。
やはり、怒っているのだろうか。
「あの、機嫌を直してはもらえませんか?」
少し沈黙した後、ホークアイは足を止めて溜息交じりにリースを振り返った。
「あのさ、俺が何で不機嫌なのか、解ってるわけ?」
「え?」
リースは驚いてホークアイを見上げた。
その様子にホークアイは困ったように前髪を掻き上げ、
「リース、できれば俺のこと”さん”付けで呼ぶのやめてくれないか? 俺達一応仲間だろ? 俺だけじゃない。デュラン達だって同じさ。君って一人だけ何だか俺達に対して他人行儀じゃないか。敬語なんて使うし・・・」

リースは返答に困った。
敬語を使うのは別に距離を置いているわけではない。
ローラントでは特に珍しくはないのだ。
それに加えて、王女として育ったリースには王族としての礼儀作法が染み付いている。もはやそれがリースという個人の性格なのだ。
だから、それをやめろと言われてもどうすればいいのか解らない。


「何だ! お前らはっ!」

時間が止まったようなホークアイとリースを現実に戻すように、デュランの強い声が二人の沈黙を破った。
ハッとして二人が振り向くと、その視線の先に立ち止まったデュラン達と対峙するように立つ獣人達がいた。その顔には酷薄な笑みが浮かんでいる。

「お前らのお陰で滝の洞窟の結界が消え、労せずして聖都ウェンデルへの侵攻が可能になった。ありがとうよ!」

そう言い放つ彼らの手が橋に掛けられた。
全員が事態を瞬時に察したが、橋の上では為す術もない。

六人は硬直して、まるでスローモーションのように獣人の手が橋を裂くのを見つめる。

そして、デュラン達は足場を失った。

足が宙をもがき、身体が急降下していくのを感じながら、彼らは急速な落下感に意識を失っていった。


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04.6.10.UP


た・・・楽しかった・・・っ。
デュランには本当に申し訳ないのですが、やはりシャルロット書くのは楽しいです♪



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